五種の大部のこと。
(1)
大乗経典における五種の大部の経をいう。五部大乗経ともいう。般若部・宝積部・大集部・華厳部・涅槃部の五。
(2)
全大乗経典を五種の大部に分類したもの。華厳部・方等部・般若部・法華部・涅槃部の五。天台の五時の教判に基づき立てた分類で、明智旭の『閲蔵知津』(えつぞうちしん)中に出づ。『大日本縮刷大蔵経』は主としてこの分類に依って諸経典を摂している。
(3)
日蓮聖人の遺文の中で重要な五篇の遺文をいう。『立正安国論』『開目抄』『観心本尊抄』『撰時抄』『報恩抄』の五つ。この中『立正安国論』は諫文であるから他の著述と同一に見るべきではないとして、この書を除き『守護国家論』を加えて五大部とする説、あるいは『報恩抄』を除いて『守護国家論』を加えて五大部とする等の説がある。三大部といい五大部といい、これは元来天台宗の三大部(『法華玄義』『法華文句』『摩訶止観』)、五大部(三大部に『涅槃経疏』『浄名経疏』の二つを加えたもの)等の名に由来したもので、聖人の遺文中から三大部・五大部を選び、それを最も重要なる遺文として尊重するようになったのである。